どこかの本

誰かのお話かもしれません。それが誰なのか、私達は知ったところでどうすることもできないのでつまりそういうことです。

君の世界

「雨、止まないね」

殺風景な部屋
気温の低い夜
特別何をするわけでもなかったけれど、
ただゲームして、くだらない話をした。
お互いに気を使う仲でもなかったし、
眠くなるまで携帯を弄った。
気づけばあいつは窓を見ていた
部屋の大きな、カーテンのしまっている窓を。
何が見えるわけでもないそこを見つめては、
あいつはとうとう口を開いたのだ

私はその言葉につい窓を見たが、
やっぱり何もないし、何も聞こえない。

その時に私があいつを笑わなかったのは、
あいつの見ている世界と、
私の見ている世界が違うものかもしれないと
一瞬でも思ったからだ。

あいつは今でも外をよく見る
授業中も休み時間も、何処かを見つめては遠い何かを見つめるのだ

「雨、酷いね」


私はあいつの見る世界を知らない

周りが笑って、
君が不思議そうに首を傾げても、

そこには青空しか、広がっていないから。