どこかの本

誰かのお話かもしれません。それが誰なのか、私達は知ったところでどうすることもできないのでつまりそういうことです。

悪魔

「貴方は音楽をやっていなきゃ、何もなかったんだからね」急に振り落とされた言葉鈍器で殴られたようだった、心臓が潰されるようだった。「でも音楽だけじゃご飯は食べれないから、やめたんでしょう?うん、ちゃんと勉強しなさいね」ああ、優しい言葉は聞こ…

消去

全部なくなればいいと思った消えて、もう存在しなければいいって何が。とかじゃなくて、全部が。何でそう思ったのかとかどうしてそう考えてしまうのかとかそんなのは、どうでもいい自分だけ消えるとかだと、なんか悔しいから、丸ごと全部消えればいいありえ…

神様

「どうか、助けてください」神様へのフリーダイヤル祈り、信じるものを救ってくださる。「神様の意地悪」神様へのフリーダイヤル不満も文句も、全部神様のせい。「もう、うんざりよ」神様からの非通知。自分だけの神様はきっと、悲しいはずなのに。

君の世界

「雨、止まないね」殺風景な部屋気温の低い夜特別何をするわけでもなかったけれど、ただゲームして、くだらない話をした。お互いに気を使う仲でもなかったし、眠くなるまで携帯を弄った。気づけばあいつは窓を見ていた部屋の大きな、カーテンのしまっている…

伝言

伝えられない苦しさが声に出せない悲しさがどれほどなのか、知りました。たくさん言いたいことがあるのに、それを声に出すことが出来ずに、飲み込んでは呼吸が不自然に早くなりました。伝えたいことがあって、それを言いたいはずなのに何故か言えずに、泣い…

大好きな人

大好きな人に憧れてはいけないそれはきっと、嫉妬に変わるから。大好きな人を愛してはいけないそれはきっと、否定に変わるから。大好きな人に嘘をついてはいけないそれがその人のためだとしても。あなたは変わってはいけない大好きな人になろうとしてはいけ…

他人事

私は知らない君の傍から離れて行く人達を眺めるだけのその心情を。君は知らない自分から離れて行く人達の心情を。誰も知ろうとはしない他人の心情など。いつも泣いてばかりなのが証拠だろう。

夜の鳥

死にかけたコウモリを拾った友人がいた。何をするわけでもなかったが、餌を少し分けて小さな頭を撫でた。コウモリはどんな病気を持っているかなんて分かりゃしないし、そもそも安易に触って良いものではない。それでも友人は静かに撫でた。真剣に、大事に。…

花と彼女

いつででも、彼女は私に花束を差し出した。それはそれは見事な花束だった。優しく目を細め、はにかんで私の前に差し出す彼女はこれで何回目になったのだろうか、それすらも忘れるほどに何度も彼女の笑顔を見ている。優しい色をしたその表情が私と正反対で気…

原因

彼女もきっと、逃げたのでしょう。消えない傷痕に目を背け、何処へ行けるわけでもなく、消えてしまいたかったのでしょう。それは珍しい事なんかではなくて、よくある話なんですから不思議なものです。泣いている彼女から逃げたのも、きっと珍しい事ではない…

不死身の門番

滴る雨も知らず、そこに彼は立っていました。逆さの夕日を写したその瞳、何を見るかはもう誰も知らないことです。廃墟と化した神殿の前、ただ、そこにいます。何も語らぬその口は人形のよう。誰もいなくなった空白の歴史の中、橙色は主の消えた王冠を手に、…

「好きな飴をあげる!」赤い飴と、青い飴と黄色い飴。 どれかひとつだけあげる。 でも、みっつの中で一つだけ、ハズレがあるから注意して選んでね。「じゃあ、赤い飴を貰おうかな」はい!と飴を手のひらに乗せた。「運がいいんだね!」 ハズレよ!と楽しそうに笑っ…

堕ちて

「どうか、お願いです」人が自身の両手を握り胸の前でどこかにいるらしい神に祈るのは、もはや宗教的なもの。 でも感情があり、心を知る人間ならば願わずにはいられないのだろう。 唱えるだけで叶えてくれる便利な存在がいると信じるならば。 叶わぬ欲の吐き溜…

輪廻

「こんな時代に生まれてくるなんて」国を守るために武器をとれと、お偉い方々が。 国民を守れないで何を守るというのか。 最後の最後まで降伏しなかったのは。 お偉いさんの何を守ったっていうんですか。戦争を免罪符に同情なんかして、なのに真面目に少しだけ…