どこかの本

誰かのお話かもしれません。それが誰なのか、私達は知ったところでどうすることもできないのでつまりそういうことです。

夜の鳥

死にかけたコウモリを拾った友人がいた。
何をするわけでもなかったが、餌を少し分けて小さな頭を撫でた。
コウモリはどんな病気を持っているかなんて分かりゃしないし、そもそも安易に触って良いものではない。
それでも友人は静かに撫でた。
真剣に、大事に。





次の日、友人は風邪を引いた。

コウモリは死んだ。

友人が、コウモリはどうなったか。なんて聞くから笑って窓を開けた。



「飛んでいったよ。空の向こうへ」




友人はそうか、ありがとう、と笑って泣いた。