どこかの本

誰かのお話かもしれません。それが誰なのか、私達は知ったところでどうすることもできないのでつまりそういうことです。

2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

原因

彼女もきっと、逃げたのでしょう。消えない傷痕に目を背け、何処へ行けるわけでもなく、消えてしまいたかったのでしょう。それは珍しい事なんかではなくて、よくある話なんですから不思議なものです。泣いている彼女から逃げたのも、きっと珍しい事ではない…

不死身の門番

滴る雨も知らず、そこに彼は立っていました。逆さの夕日を写したその瞳、何を見るかはもう誰も知らないことです。廃墟と化した神殿の前、ただ、そこにいます。何も語らぬその口は人形のよう。誰もいなくなった空白の歴史の中、橙色は主の消えた王冠を手に、…